事業拡大や売上向上を目指す組織にとって、営業戦略の設計は欠かせない課題です。
理想と現状のギャップから生まれる焦りや疑問を抱えながらも、具体的な行動指針を見いだせずに苦戦するケースは多いです。
営業戦略を体系立てて検討することで、チャンスを見極めながら確実な成果につなげる道筋が得られます。
実行力を高めるためのノウハウを押さえて、現場で活かせるステップやフレームワークを理解してみませんか。
自社の強みや市場の動向を踏まえて対策を練ることで、想定以上の結果を狙える可能性が広がります。
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営業戦略とは?
営業戦略とは、目標に対して最適な行動とリソース配分を整える方法です。
組織や個人が持つ経営資源を最大限に活用して、顧客ニーズを捉えた商品・サービスを効率的に届けます。
適切な戦略構築ができれば成果が出やすくなる反面、場当たり的な施策に終始すると目標未達を招きやすいです。
明確な数値目標と行動計画を結びつけることで、結果として売上だけでなくブランド認知や顧客満足度も向上します。
営業戦略の立て方5ステップ
営業戦略は複数の要素を統合して組み立てるため、手順を区切って考えると検討が進めやすくなります。
次に示す5ステップは、目標の数値化からチャネル設計、そしてPDCAの回し方まで段階的に整理することで、効率的かつ抜け漏れのない施策を構築できるメリットがあります。
【Step1】数値目標やKGI/KPI設定
数値目標やKGI/KPI設定とは、組織全体や個人が達成すべき目安を定量的に示す重要な作業を行うことです。
具体的な売上額や新規顧客数、成約率などを掲げると進捗管理が容易になります。
ゴールを設定しないとタスクの優先順位が曖昧になり、モチベーションの維持も難しいです。
より確かな成果を出すには、KGIとKPIを使い分けます。
KGI(Key Goal Indicator)は事業全体として最終的に目指すゴールを表す指標で、長期的な目標や売上の総額などが該当します。
一方、KPI(Key Performance Indicator)はKGIを達成するために必要な行動やプロセスを細分化した指標です。
例えば、1ヵ月あたりの商談数やアポイント数、成約率などを設定すると、活動の量と質をバランスよく監視できます。
数字を明確にして管理できる仕組みをつくると、メンバー全員が一致した方向に向けて動けるようになり、戦略がブレにくくなります。
【Step2】市場セグメンテーション
市場セグメンテーションとは、自社の商品やサービスを必要とする可能性がある顧客層を細分化し、ターゲットを明確に分けることです。
市場全体をひとまとめに捉えて営業するよりも、特定の層へ向けたアプローチのほうが効果的です。
セグメントの基準には地域、年齢層、業種、購入頻度など多角的な切り口があります。
細分化された各セグメントが求める価値や課題は異なる場合が多いです。
例えば、若年層向けに価格を抑えた商品を提案するケースや、老舗企業へ信頼性を強みに訴求して高品質なサービスを提供するケースなど、ターゲットに合った戦略を組み立てます。
明確な顧客像を設定すると最適なチャネル選択や商品提案が行え、効率的に成果へ結びつきます。
【Step3】独自の提供価値(UVP)設計
UVP(Unique Value Proposition)とは、競合と差別化できる独自の提供価値を示す概念です。
自社の商品やサービスが「なぜ選ばれるのか」を明確に定義することは、市場でのポジション確立につながります。
顧客が抱える課題を解決できる具体的なメリットや、競合他社にはない技術・サポート体制などを掘り下げると、魅力が伝わりやすくなるでしょう。
自社の強みをきちんと認識して打ち出すと、ブランドイメージが向上し、営業担当の提案活動もスムーズになります。
【Step4】チャネル&プロセス設計
チャネル&プロセス設計とは、顧客との接点から契約に至るまでの流れを整理し、どの経路で価値を伝えていくかを計画する作業です。
オンラインでの問い合わせ対応やセミナー開催、電話営業などを組み合わせ、自社の商品・サービスに合うチャネルを選ぶことが重要になります。
プロセスを可視化すると、顧客の興味を引き出し、検討・比較を促し、最終的に成約へ至るまでの最適ルートを発見できます。
メール配信やSNS運用、ウェブ広告などの施策を組み合わせ、見込み客を育成する仕組みを整備することが効果的です。
【Step5】運用KPIとPDCAの回し方
運用KPIは、日々の活動を改善するために欠かせない指標です。
問い合わせ数、商談数、成約率などが代表例で、これらを追跡して実態を把握します。
PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を実行し、達成度合いを振り返りながら戦略を再構築していくことが大切です。
計画通りに進まない場合でも、原因を洗い出し新しい施策を試せば修正が可能です。
現場の声や数値データを組み合わせた検証で、営業戦略を継続的にブラッシュアップする運用体制を築けるでしょう。
営業戦略の立てる際に使う主要フレームワーク8選
営業戦略を策定する際、複数の分析手法を活用すると視野を広げやすくなります。
次に挙げるフレームワークは、それぞれ異なる角度から情報を整理できるので、組み合わせ次第で一貫性のある戦略立案に役立つはずです。
3C分析
3C分析とは、Company(自社)、Competitor(競合)、Customer(顧客)の3要素に分けて事業環境を確認する方法です。
自社の強みと弱みを把握すると、競合との差別化ポイントを明確にできます。
顧客のニーズを抽出しながら、商品開発や販売促進の方針を立てることにも応用できる点が特徴です。
SWOT分析
SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つを整理するフレームワークです。
自社を取り巻く内的要因と外的要因を分けて考えるため、事業戦略の優先順位を決める際に参考になります。
社内リソースの有効活用やリスク回避プランの検討がしやすくなるのも利点です。
4P分析
4P分析とは、Product(製品・サービス)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)を軸に考えるマーケティング手法です。
営業戦略では、商品やサービスがどのような魅力を持ち、どんな価格設定で、どの流通チャネルを使い、どのように告知するのかを整理します。
価格競争だけでなく、品質やブランディングを含めた総合的な検討に役立ちます。
4C分析
4C分析とは、Customer Value(顧客にとっての価値)、Cost(顧客の負担)、Convenience(購買の利便性)、Communication(顧客との関係性)に着目する手法です。
4P分析と対になる概念として位置づけられ、顧客目線で施策を組み立てたい時に有効です。
顧客の求める価値に合致した形で商品を提供できているか、サービス導入のハードルはないかなどを具体化できます。
PEST分析
PEST分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4要素を踏まえて外部環境を確認するフレームワークです。
法律改正や景気動向、社会トレンド、技術革新などの影響を事業戦略に組み込むことで、長期的な視点を持った営業活動を設計しやすくなります。
5F(ファイブフォース)分析
5F分析とは、業界内の競合企業や新規参入の脅威、代替品の存在、顧客や仕入先の交渉力といった五つの力を分析する手法です。
競争環境の厳しさや自社の立ち位置を客観的に捉えるうえで参考になります。
参入障壁を把握し、営業戦略の方向づけや新たなターゲット選定にも活かせます。
STP分析
STP分析とは、Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲット選定)、Positioning(立ち位置の明確化)を一連の流れで検討するフレームワークです。
どの顧客層を狙うかを定義したうえで、自社の特徴をどのように打ち出すかを考えられます。
セグメンテーションを行った際に、そのままターゲット選定やポジショニングまで意識すると戦略が一貫しやすくなります。
VC分析
VC(Value Chain)分析とは、企業の価値創造プロセスを細分化し、それぞれの工程でどのように付加価値を生み出しているかを調査する手法です。
調達や製造、流通、販売、アフターサポートなどに至るまで、一連の活動を見渡すことで、改善余地やコスト削減のポイントを掴みやすくなります。
営業活動でも、価値を提供するまでのプロセスを可視化し、ボトルネックを解消する施策を立案できるでしょう。
営業戦略のKPI設計とモニタリング
営業戦略をスムーズに運用するには、KPI設計とモニタリングが欠かせません。
KPIを設定する際は、商談件数や問い合わせ率、平均契約単価などの数値を組み合わせて総合的に評価すると効果的です。
その際、月次や週次でのチェック体制を整備すると、異常値や伸び悩みを素早く察知できます。
達成度が低いKPIがあれば、現場ヒアリングや追加施策を検討し、都度軌道修正を行うと大きなトラブルを未然に防げるでしょう。
全員でデータを共有して現状を可視化し、課題を早期発見・改善する仕組みづくりが肝要です。
営業戦略の立て方【具体例】
BtoB向けソフトウェア企業を例にすると、年間売上◯億円達成をKGIに置き、契約件数や商談数をKPIとして設定します。
市場セグメンテーションでは、製造業向けやサービス業向けなど業種別に細分化し、それぞれが感じる課題に合わせた提供価値を打ち出していく形です。
UVPとしては、導入サポートが充実しており、既存システムとの連携が簡単という点を強調しながらセミナーやウェビナーを開催します。
チャネルとしては、ウェブ広告や展示会出展、インサイドセールスを組み合わせ、認知拡大と質の高いリード獲得を両立する戦略を構築。
運用KPIでは、週ごとのお問い合わせ数やデモ申し込み率などを追跡し、PDCAサイクルで施策を調整し続けると効果が高まります。
営業戦略の立て方に役立つテンプレートや無料ツール
営業戦略をすばやく構築するために、テンプレートや無料ツールを活用すると検討がスムーズに進みます。
表計算ソフトで簡易的にKPI管理シートを作成したり、クラウド型の営業支援システム(SFA)を導入したりすると、目標管理や案件進捗の可視化が可能です。
フレームワークのテンプレートは、インターネット上に多数公開されています。
3C分析やSWOT分析などのひな形を使えば、情報整理に手間取らずにスピーディーな意思決定がしやすくなります。
特に、スタートアップや中小企業においては、無料のオンラインツールを活用しつつ、必要に応じて有料サービスにアップグレードすると予算を抑えながら効果を高められるでしょう。
営業戦略の立て方に関してよくある質問
次のQ&Aでは、営業戦略と販売戦略の違いなど、基本的なポイントを整理しています。
営業戦略とは何ですか?
営業戦略とは、組織が売上や成約数などの成果を出すために考える中長期的な活動指針です。
市場環境や顧客ニーズ、競合状況を踏まえ、どんな顧客層に対してどのようにアプローチし、どんな価値を届けるかを包括的に計画します。
営業戦略と販売戦略の違いは?
営業戦略と販売戦略の違いは、時間軸と対象範囲です。
営業戦略はどんなチャネルを使い、どんな見込み客をターゲットにして組織の目標を達成するかを定義します。
販売戦略は店舗運営や流通を含む具体的な売り方、価格やキャンペーンなどの施策を検討するものです。
営業戦略に必要な要素とは?
営業戦略に必要な要素とは、目標値、ターゲットセグメント、提供価値、チャネル&プロセス、そしてモニタリングの仕組みです。
これらを整合性のある形で設計すると、チーム全体で方向性を共有でき、効率的な営業活動を行えます。
営業戦略がうまくいかない原因は?
営業戦略がうまくいかない原因は、KPI設定の曖昧さや、顧客セグメントの誤りなどが挙げられます。
施策を打ちっぱなしにして改善しない、顧客の声を拾わずに一方的なアプローチを続けるなども失敗を招く要因です。
定期的な検証と軌道修正を行う仕組みづくりが重要になります。
営業戦略の立て方まとめ
営業戦略は、数値目標の設定からセグメンテーション、独自の提供価値の定義、そしてチャネル設計とPDCAを回すプロセスが重要です。
複数のフレームワークを使い分けると多角的に情報を整理でき、より的確な行動指針が明確になります。
自社の強みを正しく理解し、顧客に合わせた価値提供を意識しながら、継続的に戦略を見直す姿勢が成果を左右するでしょう。